高年齢雇用継続給付金の行方~2025年度から段階的廃止を検討~
高年齢雇用継続給付金とは?
2019年12月6日の日本経済新聞に「60~64歳の賃金穴埋め給付、段階的廃止へ 厚労省」という記事が掲載されました。
厚生労働省は、2020年の通常国会に雇用保険法改正案を提出し、2025年度から段階的廃止の方向で検討しているようです。
現在、企業が定年年齢を設定する場合、60歳以上とされ、定年後も希望する労働者には65歳到達までの継続雇用(再雇用含む)が義務づけられていますが、再雇用後の賃金は、定年前に比べて低下するのが一般的です。
そこで、雇用保険の被保険者期間が5年以上の労働者が、原則60歳時点の賃金の75%未満に低下した場合、60歳から65歳到達までの間、賃金の低下率に応じて、雇用保険から高年齢雇用継続給付金が給付(61%以下で最大支給率15%)されます。
なお、支給対象月の賃金の額が363,359円以上(2019年8月以降)の場合は、支給されません。
高年齢雇用継続給付金廃止による影響は?
従来、高年齢雇用継続給付金は、定年再雇用者の年金支給開始までの賃金低下を補うものとして活用されてきましたが、廃止による影響が懸念されます。
高年齢雇用継続給付金が廃止されれば、労働者の実質的な手取額が減少しますので、企業は賃金増で補うか否かの判断を迫られます。
企業が補う場合、高年齢労働者のモチベーション維持には貢献しますが、人件費が増加して、経営に影響を与えかねません。
逆に、企業が補わない場合、高年齢労働者のモチベーションが低下する恐れがあり、高齢者雇用を積極的に推進してきたこれまでの経緯と矛盾することになりかねません。
国にとっては、雇用保険給付が減少する財政上のメリットが大きいでしょうが、企業にとってのメリットは、毎月の給付金申請手続きがなくなり、事務作業量が減少する程度ではないでしょうか。
高齢者を多数雇用している企業ほど影響が大きいので、今後の動向に注意しながら、対策の検討が必要になりそうです。