コロナ延期の根拠規定
申告期限4月16日まで延長
首相の全国小中高一斉休校要請の2月27日発言のあった日、所得税の申告期限も4月16日まで延長されることになったとの情報が流されました。首相発言は、新型コロナ感染症対策本部での発言で、その末尾は行政機関宛てで、感染拡大抑制に必要な法案を早急に準備せよ、と締め括っています。申告期限延長はこれに応じたものです。
所得税の申告期限は3月15日と所得税法で定められています。なお、国税通則法には、「災害その他やむを得ない理由」があるときの期限延長規定が用意されていて、「その理由のやんだ日から2月以内」とされています。「理由のやんだ日から」との規定なので、これは今般は適用しにくいため、今次は特別な法案を準備するのでは、と推測されました。
3月6日に国税庁長官告示で対応
申告期限の延長をアナウンスしていた国税庁のホームページに、3月6日に国税庁長官の官報告示がなされた、との情報が付加され、これにより国税当局は、期限延長の法的手続きが完了したとの態度を示しています。
国税庁長官の官報告示はその法的根拠を国税通則法施行令第3条第2項としています。この政令規定は、先に適用しにくいと指摘した国税通則法の規定の委任規定で、しかも、その第2項は、e-Tax 使用不能事象発生の場合の混乱に対処する目的で平成29年に急遽追加された規定です。
長官告示で済めばラクチンだろうが
国税通則法施行令第3条第2項はe-Taxブラックアウトのような現象を想定しての規定ですが、それを例示の代表としてそれに類似する「その他の」多数行為困難者発生事例にも対処出来るとの規定になっています。
ただし、例示規定なので、適用には類似性の検討が要求されます。e-Taxブラックアウトの類似例に今般の新型コロナ事件は該当するのか、と問えば、疑問アリです。その上、「その理由のやんだ日から2月以内」との規定が委任元の法律にあるので、類似性があっても「理由のやんでない」事例は排除されるように思われます。
納税者不利処理ではないものの、この検討からは、長官告示で済ませてよいものなのかには疑問が残ります。