最高裁・評基通準用時の取扱いを判示 非上場株式の譲渡価額
自らが経営する会社の株式を関係会社に譲渡する場合、譲渡価額はどのように評価すべきでしょうか。
A社代表取締役甲(被相続人)が、同族関係者と所有するA社株式(合計22.79%)の一部(7.88%)をB社に譲渡した価額について所得税法59条の低額譲渡にあたるか、根拠となる通達の解釈が争われました。
誰の議決権割合?どの時点の議決権割合?
非上場株式の譲渡価額の時価について規定する所得税基本通達59-6の実務上の取扱いは、譲渡人の「譲渡直前の議決権割合」にもとづく評価です(通説的な解釈)。
課税庁は通説的な解釈により類似業種比準価額で評価すべきとしましたが、納税者は、通達を読み直し、新たな解釈に基づいて、株式取得者の「取得後の議決権割合」による配当還元価額での評価を主張しました。
最高裁「課税の趣旨で考える」
この争いは、地裁では国側勝訴、高裁では一転、納税者側が勝訴していました。
今般、最高裁では、高裁の判断には所得税法59条1項の解釈に誤りがあるとして原判決を破棄差戻し、これまでの通説的な解釈を示しました。
相続税・贈与税が財産を取得した者に取得した財産の価額を課税価格として課税するのに対し、所得税(譲渡所得)は、資産の譲渡時に譲渡人に生じた増加益に、「その時における価額」で課税します。
最高裁では、通達の趣旨は、相続税・贈与税と所得税(譲渡所得)との性質の差異に応じて、株式を譲渡した株主について判断することであると判示しました。
条文をどのように解釈すべきなのか
また最高裁の裁判官は補足意見の中で、納税者の独自の通達解釈に対し、「法令の内容に合致しない文理解釈による通達の取扱いは適法と認められない」と述べています。
補足意見は、通達の取扱いに際し、法令の趣旨目的に適合した解釈ができているか確認することに気づかせてくれます。